「中居正広『Mistake!』が映す切なさ──言えなかった一言が残る夜」

目次

君を忘れる練習をしていた

失った恋を思い出に変える、その途中
中居正広『Mistake!』
映し出す後悔と未練。
終わった恋にけじめをつけられず、
過去と向き合う青年の物語。

春の匂いが、まだ君を連れてくる

 

桜の舞う駅前の風に
君の気配を感じた。
もういないのに。
それでも、忘れられなかった。

 桜の駅前で

四月の風が
やけに優しくて
妙にイラついた

高校の頃、よく待ち合わせた
駅前のロータリー。

意味もなくそこに立つ自分に、
腹が立った。

スマホを開いて、
何も来ていないLINEを
無意識に確認する──

やめろって、思ってるのに。

最後の言葉だけが
まだ胸の奥に残ってる。

「やっぱり、間違いだったね。
私たち」

笑って言った彼女の背中は、
今も、はっきり覚えてる。

 恋は続かないんじゃない。終わらせてしまったんだ。

付き合ってた。
でも“つもり”だったのかも。

喧嘩をしても
すぐ謝るのは彼女だった。
俺は黙って、
謝らなかった。

それが大人だと思ってた。
格好いいと、勘違いしてた。

思い返すたび、
あの頃の自分が
心底、恥ずかしい。

君じゃない誰かと

彼女を見かけたのは
別れて、ひと月くらいの頃。

隣には知らない男。
彼女は、笑ってた。
自然な顔で。

その瞬間、
心の奥が音を立てて
崩れた気がした。

あんなにあっさり
忘れられるのか、って。

悔しさと情けなさ。
そして、自分への嫌悪。

「Mistake.」
間違っていたのは、
恋じゃない。
俺の態度だ。

 忘れ方がわからなかった

 

写真を消して、
LINE履歴も削除して、
SNSも見ないようにして──

それでも、
街の風景に、
彼女が混じってくる。

コンビニの棚に
好きだったガム。

帰り道に見上げた空。

ぜんぶ、彼女を
思い出させる。

「忘れたい」
「忘れられない」
そのループを、
俺は何度も繰り返してた。

 君を見た、最後の日

今日ここに来たのは、
ただの偶然だった。

でも、
目の前に彼女がいた。

本当に、いたんだ。

──隣には、
手を繋ぐ男がいた。

彼女は、また笑っていた。
俺が知らない顔で。

もう、
その笑顔に
俺はいない。

それでも、
ようやく思えた。

「これで、よかった」

 歩き出すための一歩

電車が風を巻き起こして
彼女の姿を連れて行く。

その背中を、
もう追いかけない。

「じゃあな」

ぽつりと漏れたその一言が、
やっと、
終わりを教えてくれた。

春の匂いは、
まだ少し痛い。

でも、
今日から俺は、
ちゃんと歩いていく。

後日談/余韻
君がいない春に、新しい靴を履く

季節が変わって、
俺は新しい靴を買った。

歩く道が変わっても、
あの恋は
心の片隅に残っている。

“間違い”だったとしても、
大切だったことに
変わりはないから。

 

あとがき

この短編は、中居正広さんの
『Mistake!』をもとに書きました。

「忘れたいのに忘れられない」
「終わったのに終われない」

そんな恋を経験したことのある人に、
きっと響く曲です。

そして、どこかで
過去と向き合えるようになる
その一歩が、
自分を許すことなんじゃないかと思います。

読んでくださり、ありがとうございました。

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