【あらすじ】
燃え上がるように恋し、
同じ熱さで壊れたふたり。
パク・ジュニョンの『恋の炎』が描く、
情熱の果てに待つ静かな別れ。
あの夜の景色は、今も胸を焦がす。
【最後に交わしたキスは】
最後に交わしたキスは、
まるで火傷のように熱かった。
東京の街に灯るネオンの下、
あの人はもう戻らないと知っていた。
けれど、まだ消えない炎が胸にある。
【あの人と出会ったのは、】
あの人と出会ったのは、
真夏のライブハウスだった。
蒸し暑い夜、汗を流しながら
誰よりも熱く歌うその姿に、
一瞬で心を奪われた。
彼はステージの上の人だった。
でも、私を見つけた時の目は、
どこか不器用で、やさしかった。
「また来てくれる?」
ライブ後、客の波の中で
声をかけてきた彼に、
うなずくことしかできなかった。
それからの恋は、激しかった。
朝方まで語り合った夜も、
人目を忍んで交わしたキスも、
全部が“本気”だった。
だけど──情熱は、時に人を傷つける。
彼は夢を追っていた。
私は現実を生きていた。
「もう限界かもしれない」
彼の言葉に、私は何も返せなかった。
だって、私の中にもその思いは
とっくに芽生えていたから。
最後に会ったのは、
冬の始まりの夜だった。

「きっと、また会えるよな」
それが、彼の口癖だった。
だけど、その夜は違った。
キスをしたあと、
彼は何も言わずに
背を向けて歩き出した。
手を伸ばせば届いた。
でも、伸ばさなかった。
それが私の、答えだった。
そして、今日。
彼はメジャーデビューを果たした。
テレビに映る彼の姿は、
昔と同じ目をしていた。
「おめでとう」
そう呟いた声は、
誰にも届かないまま、
空に溶けていった。
【プロローグ】
台所の引き出しに眠る、
古びたライター。
あの人が置いていったそれに、
今も時々、火をつけてみる。
もう燃えるものはないのに。
【あとがき】
『恋の炎』というタイトルを見た瞬間、
“燃え上がって、燃え尽きる恋”が
浮かびました。
熱く、激しく、だからこそ
儚く終わる恋。
パク・ジュニョンさんの声から感じた
まっすぐな情熱を、物語に託しました。
心のどこかに
まだ火が残っているあなたへ、
この物語がそっと寄り添えたら嬉しいです。

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